常田健

常田健東北、津軽の地で生まれ、りんご園を営みながらひとり黙々と絵を書き続けてきました。描き続けた絵は「人に見せるため」ではなく、ただ自分が 描きたいから描 く、「売るため」に描いているのではないので、いつでも自分の近くに置き、いつか手直しをすると言ってずっと日の目を見る事なく寝起きしていたアトリエ代 わりの土蔵の中にしまい込んでいました。常田健が描いた絵は、東北の大地に生きる「農民の姿」・「反戦への思い」・「過酷な労働と理不尽な弾圧」・「束の 間の休息と収穫の喜び」・「親子の絆」・・・時代の波に翻弄されながらも力強く生きた人々の真実の姿がえがかれています。無欲で不器用な人生を一途に歩ん できた常田健の思いが絵を通して作品に現れています。土蔵から生まれた300点余りの作品をご覧ください。

常田健       常田健       常田健

略歴

1910年(明治43年)0歳  10月21日、青森県五郷村(現在の南津軽郡浪岡町)北中野に五男二女の長男として生まれる。 父・健三郎は浪岡小学校校長。母・みさほも教師で、画家・阿部合成の父の妹にあたる。阿部合成とは同い年のいとこにあたる。

1928年(昭和 3年) 18歳  旧制弘前中学校を 卒業後、父の反対を押し切って上京。川端画学校に入学する。

1930年(昭和 5年) 20歳   プロレタリア美術同盟研究所(長崎町プロレタリア美術研究所)で学ぶ。

1933年(昭和 8年) 23歳  古里での軍事教練に反対した農業成年のストライキを聞き、青森へ帰郷。ストライキは鎮圧された後であったが、その関係者との交流があり、農民運動の関係者として検挙され、拘留を受ける。保釈後、青森市郊外の叔父の家に寄宿、この頃から阿部合成と交流を交流を深める。

1934年(昭和 9年) 24歳  従兄弟で画家の阿部合成と絵画を研究、制作に励む。グレル家(不良のグレルの意味)というグループを結成、太宰治、谷崎潤 一郎、芥川龍之介、棟方志功らとも交流していた。フレスコに興味を持ち、その表現を 確立しようと合成と研究を重ねる。この当時青森市郊外の合成旧宅土蔵のコンクリート壁4面に合成と描いた作品は、現在青森県立郷土館に保存されている。 Kenchaloff da Grell(ケンチャロフ・ダ・グレル)健のペンネーム
グレルの紋章

1938年(昭和13年)28歳  常田健の生き方に影響を与えた祖父が死去。

1939年(昭和14年) 29歳  県立弘前高等女学校に在職していた今井純と結婚。第26回二科展「ひるね」「飲む男」出品。「ひるね」入選
ひるね 飲む男

1940年(昭和15年) 30歳  第27回二科展「睡れる水引人」出品・入選。「ひるね」製作(現在、青森市浪岡「中世の館」に収蔵)

1941年(昭和16年) 31歳  第28回二科展「はじまり」出品・入選。

1943年昭和18年) 33歳  第30回二科展「田の草取り」出品・入選。

1945年(昭和20年) 35歳  終戦によって除隊。戦時中も絵具の配給などを受けながら製作を続けていた。

1950年(昭和25年) 40歳  青森美術会の創立に参加。

1951年(昭和26年) 41歳  浪岡町出身の小説家、平井信作の新聞小説「生柿吾三郎の来歴」(東奥日報社)の挿し絵を担当。

1955年(昭和30年) 45歳  日本美術会会員となる。青森平和美術展(青森美術会主催)日本アンデパンダン展に出品(以降毎年出品)

1966年(昭和41年) 56歳  青森で個展開催。

1967年(昭和42年) 57歳  東京・紀伊國屋画廊にて個展開催。

1968年(昭和43年) 58歳  弘前で個展開催。

1984年(昭和59年) 74歳  青森美術会により『常田健画集』刊行

1991年(平成 3年) 81歳  第12回青森県文芸協会賞受賞。

1992年(平成 4年) 82歳  浪岡町中世の館ホールで個展を開催。妻・純 死去。

1997年(平成 9年) 87歳  第39回青森県文化賞受賞。

1999年(平成11年) 89歳  「常田健-津軽に生きる八十八年」展を東京・ギャラリー悠玄にて開催。同時に画集『常田健』(角川春樹事務所)刊行。

2000年(平成12年) 90歳  「TOHOKU/TOKYOU1925-1945」展を板橋区立美術館(東京都 2月26日〜3月26日)で開催。 宮城県美術館(宮城県 4月8日〜5月14日)で開催。 4月26日急性心筋梗塞のため逝去。 「農民を描き続ける沈黙の画家 常田健展」全国巡回展を大阪なんば高島屋グランドホール( 4/27〜5/9)・京都府高島屋京都店(5/11〜6/16)で開催。 岡山県高島屋岡山店(8/10〜8/22)開催。 第48回「青森平和美術展」(8/17〜8/20)に作品2点を出品する。 「常田健」展(9/1〜9/10)を長野平林堂書店上田原店(長野県)で開催。 「農民画家・常田健追悼展」(9/15〜9/24)浪岡町現代美術空間(現在の青森市浪岡)で開催。 「大地の画家−常田健展」(9/22〜10/22)青森県立郷土館(青森市)で開催。[共催・東奥日報社]

2001年(平成13年)  「常田健展」を千葉そごう美術館(千葉県 3/24〜4/22)・新津市美術館(新潟県 6/15〜9/2)・酒田市美術館(山形県 11/2〜12/2)にて開催。

2002年(平成14年)  「大地の画家・常田健未公開デッサン展」・「画友展・尾崎ふさ個展」(4/16〜5/15)をギャラリー悠玄(東京)で開催。

2004年(平成16年)  「大地の絵筆・常田健個展」(10/16〜10/24)を「大地の感謝祭」にて開催。

2010年(平成22年)  生誕100年を迎える。青森県立郷土館において生誕100年特別展「常田健展」を開催。